鎌倉後期に始まる土佐刃物は、
明治の廃刀令後もその伝統を守り続け、
平成十年に伝統工芸品に指定されるなど、
今や日本三大刃物としてその名を馳せる。
土佐刃物を特長づけるのが、
日本刀の作刀技術から生まれた自由鍛造法だ。
《余狩猟者・尺刀拵》は、
自由鍛造の奥義を継承する豊国が、
この地に伝わる狩猟刀に,
創意工夫を加え鍛えた一尺という大業物。
作刀法は、地金の極軟鋼をタガネで割り、
高純度の炭素鋼、土佐オリジナル白鋼を挟み込み、
鍛え上げる土佐伝統の古式自由鍛造法による。
この鍛え抜かれた刀身を最大限に生かすべく、
豊国作品では珍しく、
和式刃物の思想とは違う工夫が随所に見られる。
「ナイフは誰もが使いやすいことが第一条件」
との信念から、ブレードがハンドル後部まで一体のフルタング、
指を守り力を込めやすい真鍮製ヒルトなど、
和、洋の良いところを最大限に引き出し融合させた、
和洋折衷作品に仕上だっている。
水研石による刀付け、研磨...と手間を借しまず生み出される、
見る者圧倒する精悍な黒槌目の刀身は豊国の誠実な仕事ぶりが伺える。